標準予防策(スタンダードプリコーション)
感染症の有無に関わらず、すべての人に対して、血液、体液、汗を除く分泌物、排泄物、損傷した皮膚、粘膜等の湿性生体物質は、感染の可能性があるとみなして対応する方法を標準予防策(Standard Precautions、スタンダードプリコーション)と言います。
スタンダードプリコーションの目的は患者さんと医療従事者の感染リスクの減少です。
スタンダードプリコーションでは「湿性生体物質には感染性がある」とみなして対応することで、湿性生体物質を介した感染から、患者さんと医療従事者を守ります。
湿性生体物質とは
- 血液
- 体液
- 汗以外の分泌物
- 排泄物
- 創傷のある皮膚
- 粘膜
(日本看護協会「職場での感染予防」を参考)
スタンダードプリコーションの3原則

具体的には、
- 「空気予防策」
- 「飛沫予防策」
- 「接触予防策」
の3つです。
新型コロナウイルス感染症の感染対策には、スタンダードプリコーションに加え、「感染経路別予防策」も必要です。
当院におけるスタンダードプリコーションの実際
医療用空気清浄機
メディカルライトエアーを院内に4台設置。
各診療室と待合室、スタッフルームの合計4台設置しております。
これにより院内の空気感染を大幅に減らすことが可能です。
メディカルライトエアーの詳細はこちら ☞
口腔外バキュームの使用
左上の動画がタービン使用時に口腔外バキュームあり、左下の動画が口腔外バキュームなしになります。
音は少々耳障りなのですが、この動画を見ると、口腔外バキュームの有用性がよくわかります。
歯科医院では口腔内で歯を削ったり、歯石を取るためのスケーリングなどの処置が日常的に行われますが、この時に歯の神経や機具を冷却するために「注水」といって、水を噴霧します。この水自体は滅菌フィルターを通ったもので問題ないのですが、口腔内に噴霧されるとあたりに飛び散ります。これが感染源となるのです。なのでこの水を細大漏らさず吸い込む強力な口腔外バキュームがとても重要なのです。リンク先にはその効果を示す動画もありますので、ご覧いただければ、と思います。
当院ではこのアルテオを9台すべてのユニットに設置して、注水作業が必要なすべての治療に使用しております。少し音がうるさいのが玉に瑕ですが、皆様の健康を守るためにご辛抱いただければ、と思っています。
しかし、ただ吸い込むだけで、環境に垂れ流しでは意味がありません。これらの9台のアルテオは巨大なバイオフィルターを装備した、私の背丈ほどもある集塵装置に繋がっており、これらは歯科医院専門の清掃業者により、定期的に清掃されてクリーンな状態を保っています。

ハンドピース滅菌器(2台)
当院では患者様の口の中に入る物は全て使い捨てか滅菌としております。
中でも口の中で直接歯を削るハンドピース(タービンやコントラ)は血液の暴露にあったり2次感染が最も心配なところ。
当院では一般的歯科医院のその一歩先を行く「全てのハンドピース(タービンやコントラ、ストレート)を国際基準のSクラス滅菌器で完全滅菌」を行っております。

クラスB滅菌器(2台)
当院では患者さんの口の中に入る物は全て使い捨てか滅菌としております。
一口に滅菌器と言っても、その性能はメーカーや機種に因ってさまざま。当院では純国産湯山製作所のクラスB準拠滅菌器を導入。ヨーロッパ基準の滅菌器です。通常の滅菌器は、高圧蒸気でチャンバーといわれる庫内を満たして滅菌をするのですが、中が中空の器具の場合、そこには空気が残っているので蒸気が行き渡らず、その内部までの滅菌は不可能でした。クラスB滅菌器では、滅菌行程で数度チャンバー内を真空引きして、内部が中空の器具であっても高圧蒸気が行き渡る構造となっております。
まだ歯科医院では導入数が少ない滅菌器ですが、安心・安全な医療の提供のために導入しました。

基本セット
当院では、患者さんに直接触れる道具や材料、その他の物を他の患者様と交差しないようにし、院内感染予防に努めております。
1)基本セットは患者さん1人づつの滅菌パックで滅菌。
2)形成用のバーセットも、用途に合わせたセットで滅菌。
3)ヘッドレストカバー、うがい用コップも患者さんごとに使い捨て。
4)患者さん用のタオルは、専門業者からの納入で滅菌済み。

バーセット
歯の治療で欠かせない物はコレだと思います。見方によっては痛そうなのですが。。。患者さんの口の中に直接触れる治療器具となります。
当院では、全てのバーを消毒・清掃した後に、セットとしてパッキングし、患者さんごとに新しい滅菌済みのセットを使います。

印象用寒天シリンジ
さあ、これはなんでしょう?注射器?にてるけど、ちょっと違います。今や麻酔用の注射器を滅菌してない病院はあり得ないと思うのですが、盲点はコレ。。。歯の型取りをする時に温かい「寒天」という材料を押し出す道具です。大抵の病院ではあまり滅菌をしませんが、当院では「患者様の口の中に入るものは滅菌する」という大前提の元に、印象用シリンジも滅菌しているので、10本以上の本数が在ります。

バリアフィルム
さてバリアフィルムとは何でしょう?その名の通りバリア(=保護する)フィルム(=被膜)なのですが。。。術者やアシストが診療中に触りそうな部分にあらかじめ貼付しておくフィルムの事です。
なぜ、このような物が必要かというと、診療中に患者様の口腔内を触った手(グローブ)でライトなどを触ってしまうとそのハンドルに細菌や出血を残してしまいます。その次の患者様をご案内して他がいくら清潔でも、ライトハンドルなどが汚染されてるとそこを触ってしまえば、結局は患者様へ2次感染を起こしてしまいます。
これの貼付の為に患者様をすぐにご案内出来ないなど、じれったい事や、手間ひま・コストは掛かりますが、安全第一です。

ディスポーザブル・メス
当院ではこんな物まで使い捨てですが、メスは直接出血や体液に触れる為に最も高度な感染予防管理が必要であると考えています。
当院のメスはコストは掛かるのですが、刃先収納式。。。これは片付けの際にスタッフが怪我をしないように、と言う配慮でもあります。
このディスポーザブルメスは大病院のオペ室で使われているものと同じです。

個包装滅菌済み消毒用ヨード綿球
コレを導入するにあたって、スタッフから「院長大丈夫か?」と心配されたくらい歯科では馴染みの無い消毒用ヨード綿球ですが。。。(笑)
傷口を消毒するのに滅菌状態の物を使うのは医科の世界では常識です。世界標準の滅菌体制です。